肥満は糖尿病、高脂血症などの生活習慣病の主要な危険因子として深刻な問題である。しかし、脂肪細胞分化初期過程におけるメカニズムはほとんど解明されていない。本年度、申請者らがこれまでに脂肪細胞分化初期に発現が増加する遺伝子として単離したRGS2とTCL/TC10βLについて、両因子の脂肪細胞分化初期過程における機能を明らかにするために、両因子と相互作用する因子群の同定、さらに両因子により発現が制御される因子群の同定を目的として検討を行った。まず、TCし/TC10βLの恒常的活性変異体のFlag融合タンパク質を発現させた3T3-L1細胞を樹立した。樹立した細胞から調製したcell lysateについて免疫沈降を行い、TCL/TC10βLに特異的に相互作用すると思われる2つのバンドを検出した。さらに、RGS2についてもFlag融合タンパク質を大腸菌に発現させ、精製し、3T3-L1細胞から調製した細胞質画分を用いたPull down assayを試みた。その結果、RGS2と相互作用すると思われる7つのバンドを検出することができた。さらに、RGS2およびTCL/TC10βL各過剰発現細胞を用いたDNAチップ法により、両因子に発現が制御される遺伝子の単離を試みた。DNAチップ解析の結果、RGS2およびTCL/TC10βLは、転写因子、シグナル伝達関連因子、膜タンパク質など、様々な遺伝子群の発現を制御していることが見い出された。また、単離された因子の多くがRGS2、TCL/TC10βLと同様、脂肪細胞分化初期過程においてその発現が大きく変動することを明らかにした。さらに、TCL/TC10βLのノックアウトマウス樹立をめざし、ターゲティングベクターの構築を行い、ES細胞への導入を現在試みている。本年度得られた知見について、更に詳細な検討を行い、RGS2およびTCL/TC10βLの脂肪細胞分化初期過程における機能を明らかにしていきたい。
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