sPLA_2-IIA遺伝子発現を調節する脂質性因子(Lipid X)の性状解析 12/15-LOX過剰発現細胞をIL-1α/TNFαで刺激後、経時的に細胞および培養上清を回収し、これらの試料からBligh & Dyer法によって総脂質を抽出し、各脂質のsPLA_2-IIA発現に対する効果を検討した。その結果、sPLA_2-IIA発現は、IL-1α/TNFαで30刺激した細胞から抽出した脂質を用いた場合に最も強く誘導され、6時間以降で回収した脂質を用いても誘導は観察されなかった。また、培養上清中には、活性は観察されなかった。従って、Lipid Xは、刺激後一過的に細胞内で産生され、その後速やかに不活化される可能性が考えられた。次に、このLipid Xに対する各種ホスホリパーゼの効果を検討した。その結果、PLA_2処理によって活性が消失することが明らかとなった。一方、PLCおよびPLD処理により、それぞれDGとPAに消化を受けても活性が保持されることが明らかとなった。従って、Lipid Xが、sPLA_2-IIAを発現誘導するには、グリセロール骨格のsn-2位に脂肪酸がエステル結合していることが必須であることが示唆された。また、この作用を発揮するためにはリン脂質の極性基については、特異性はないものと考えられた。次に、Lipid Xの還元剤に対する効果を検討した。その結果、NaBH_4処理により活性が消失することが明らかとなった。この結果は、Lipid Xは脂肪酸部位に何らかの酸化的修飾を受けており、この酸化修飾が活性を発揮する為に必須であることが示唆している。 以上の結果より、Lipid Xは、IL-1α/TNFα刺激直後に産生される脂肪酸部位に酸化的修飾を受けたリン脂質であることが明らかとなった。現在、このLipid Xの同定を目指して、精製およびMass Spectrometry解析を行っている。
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