研究概要 |
平成16年度の抑制制御分子発現制御システムによる新規マスト細胞活性化シグナル伝達分子の探索に関する研究から、下記の知見が得られた。 1)独自に解析したラットSLAP cDNAの予想アミノ酸配列に基づいてC末端側の14残基のペプチド(RKSSLFSAPQYFED)を作製してウサギを免疫し、ラットSLAPに対する抗血清を調製した。免疫後の抗体価は64,000以上であった。この抗血清を用いて、抗原刺激によるラットマスト細胞(RBL-2H3細胞)におけるSLAPタンパク質の経時的な発現誘導をWestern blottingにより解析した。その結果、目的の分子量(34kDa)を含む複数のタンパク質の発現誘導が観察された。この抗体により、未だ十分に解析されていないマスト細胞の抗原刺激によるSLAPタンパク質の発現誘導とそのシグナル伝達における役割が解析されることが期待される。 2)ラットのオルソログと交差する抗ヒトCISH抗体(N-19)を用い、抗原刺激および抗炎症剤デキサメタゾン処理によるRBL-2H3細胞のCISHタンパク質の発現誘導をWestern blottingにより解析した。その結果、抑制制御分子であるCISHタンパク質は、抗原刺激だけでなくデキサメタゾン処理によっても発現が誘導されることが明らかになった。この結果は、抗原刺激によって誘導されたCISHタンパク質の役割とデキサメタゾンの抗炎症作用に何らかの類似性が存在することを示唆した。 本年度の成果として、抑制制御分子としてのSLAPおよびCISHの機能解析に貢献することができた。次年度の目的遺伝子の発現抑制技術としてRNA干渉法を用いる予定であるが、これまで検討したかぎりRBL-2H3細胞へのsiRNAのリポフェクションは十分なトランスフェクション効率が期待できないおそれがあり、電気穿孔法あるいはウイルスベクターの利用を検討する。
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