研究概要 |
本研究は、食細胞活性化時の情報伝達及び細胞応答の機構について、RNA干渉法を用いて解析することを目的とする。情報伝達因子の一つであるSrcファミリーチロシンキナーゼ(SFK)に着目し、平成16年度には、Hck, Lyn, Fgrの3種のSFKの発現量が食細胞の分化過程で増大すること、及びこれらのSFKに対するsiRNAを用いて、細胞刺激から活性酸素産生に至る情報伝達経路において、3種のSFKの中でLynが最も重要であることを示した。17年度は貪食反応について検討し、やはりLynが最も大きな役割を果たしていることを示した。18年度においては、情報伝達経路においてSFKの下流に位置するアダプタータンパク質c-Cblに着目し、c-Cblのリン酸化とSFKとの関連について検討した。 細胞は、ヒト単球系培養細胞U937をTNFαと活性型ビタミンD_3によりマクロファージ様に分化誘導して用いた。siRNAはエレクトロポーレーションにより細胞に導入し、各標的SFKの発現量低下をウェスタンブロッティングにて確認した。細胞刺激は、補体成分をコーティングした多糖粒子オプソニン化ザイモザン(OZ)を用いて行った。c-Cblのリン酸化は、c-Cblのリン酸化チロシンに対する特異的な抗体を用いて、ウェスタンブロッティングにより検出した。 マクロファージ様U937細胞をOZで刺激したところ、c-Cblのリン酸化チロシンレベルの一過性の上昇が見られた。3種のSFKに対するsiRNAそれぞれを導入した細胞で検討したところ、Lynの発現量を低下させた細胞において、c-Cblのチロシンリン酸化が最も強く阻害された。この結果から、細胞刺激時、情報伝達経路の一因子であるc-Cblのリン酸化レベルの調整にLynが重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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