本研究は細胞内脂肪滴の形成メカニズムに重要な因子ついて明らかにすることを目的としている。今年度(平成16年度)は遺伝学的手法を用い脂肪滴の形成不全を示す高等動物細胞変異株を樹立するため、変異株分離のための簡便で効率的なスクリーニング法を開発し、実際に変異株のスクリーニングを行った。 変異株分離の親株には遺伝学的解析に適したCHO細胞を用いることにした。また変異株は致死性である可能性があるので温度感受性株として分離されるよう、通常増殖培養温度は33℃、スクリーニングは40℃で行った。CHO細胞の脂肪滴は通常培養条件下では検出しにくいが脂肪酸(オレイン酸400μM)・コレステロール(20μg/lm)を負荷した培地で2日以上培養することで効率よく脂肪滴を形成することがわかった。実際のスクリーニングでは3日間脂質負荷を行うこととした。さらにFACS(セルソーター)で変異細胞を分離するため蛍光標識法を検討した結果、Nile Red(0.4mM)を用いた場合に脂肪滴を最も簡便にその脂肪滴量に応じた標識が可能であり、しかもバックグラウンドが低いことがわかった。この標識法で細胞を染色した後、FACSで蛍光強度の低い(約1%)細胞を分離回収した。この細胞集団(10^5程度)を2週間ほど培養し数百倍に増やした後に再度脂肪負荷・標識・分離を繰り返す。これを6回繰り返すことによりほとんど脂肪蓄積をおこさない細胞亜集団を得ることができた。さらに培養を続け、形質が安定した単クローン変異株として数株を樹立した。現在これら株の性状を生化学的・細胞生物学的手法を用い検討中である。
|