マクロファージは、外来抗原だけでなく、体内のアポトーシス細胞などの貪食除去にも携わっており、貪食除去に伴う炎症反応を巧みに制御することによって生体の恒常性を維持するのにも重要な役割を担っている。このマクロファージは生体内では、多くの組織に広く分布し、様々な形態を成し、様々な役割を担っている。それが故に、in vitroにおけるマクロファージの生化学的解析では、マクロファージの採取方法・培養方法などにより様々な結果が報告されてきているのが現状であり、どのような仕組みによって炎症反応が制御されているのか、統一的な結果は得られていない。そこで私は、まず均一な培養マクロファージを取得するため、マウス骨髄細胞からM-CSFもしくはGM-CSFを用いて、マクロファージを分化誘導させ、その分化過程とマクロファージの機能(主に貪食反応および炎症性サイトカイン:MIP-2の産生)との相関について検討した。 マウス骨髄細胞をM-CSF存在下で培養すると、経時的にマクロファージ特異的細胞表面マーカー:F4/80を発現する細胞群が増加し、一週間ですべての付着細胞がF4/80陽性となった。また培養誘導の間、個々のF4/80陽性細胞のF4/80発現量も経時的に上昇し、やはり一週間で最大となった。これらの結果から、マクロファージ特異的表面抗原を指標とする限りにおいては、一週間で成熟マクロファージが誘導できることが分かった。次に、これら誘導過程にあるマクロファージの貪食能とMIP-2産生量を調べると、貪食能は、マクロファージの成熟度と相関していたのに対し、MIP-2産生は、誘導5日目で最大となり、成熟度とは時期的なずれが生じていた。この結果は、未熟なマクロファージが炎症反応の制御により深く関わることを示すものであり、現在その制御機構について生化学的な解析を試みている。
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