研究課題
異常アミノ酸含有ペプチドであるミラジリジンAとトカラアミドAの全合成ならびにそれらの類縁体合成さらには、カテプシンBに対する阻害能の評価を行った。ミラジリジンAについては昨年、その形式合成の達成を報告したが、今回はさらに一歩押し進め、全合成による天然体を得ることに成功した。これによって海綿からの単離、構造決定が正しいことを証明することができた。最終段階での脱保護にはPLE(porcine liver esterase)を用い、温和な条件下に行うことで、92%という高い収率で天然物を得ることができた。また、システインプロテアーゼであるカテプシンBがミラジリジンAのどの部位と相互作用しているのかを明らかにするために、類縁体を多数合成し、その活性相関研究に展開した。その結果、ビニルアルギニン部分が必須であることを見いだした。また、トカラアミドAについては、アルギニナール部分が不安定であり、アルギニン側鎖であるグアニジド官能基の脱保護が大変困難であった。そこで、無保護という条件で、合成を押し進めることで、その問題を解決することができた。一方で、抗HIV活性を有するカリペルチンAの全合成にも挑戦した。その結果、立体化学が不明であったメトキシチロシン部分の効率的な合成法の確立ならびにその天然体の絶対配置を決定することができた。以上のような結果を今年度は残すことができた。これらの成果は、3年にわたる若手研究(B)に対して、ミラジリジンA、トカラミドAの合成を達成し、活性相関研究に展開できたことは、医薬品創成の足がかりとして当初の目的を達成したことを意味している。しかし、カリペルチンAについては、天然物の立体化学を決定することに終止してしまい、構造活性相関研究という目的を達成することができなかった。若手研究(B)としては終了するが、今後も本研究の発展に努めていきたいと考えている。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (5件)
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