研究概要 |
アシルカルニチン誘導体は肝ミトコンドリアに存在する酵素carnitine palmitoyltransferase I (L-CPT I)を阻害し、間接的に糖新生を減少させることができるため、II型糖尿病における高血糖症の治療薬として期待されている。著者はL-CPT I阻害剤を指向し、アシルカルニチンのカルボキシル基をホスホニル基で等配置換したγ-アミノ-β-アシルオキシホスホン酸のキラル合成を検討した。 アリルホスホナートをAD-mix-αによりジヒドロキシ化すると、β,γ-ジヒドロキシホスホナートが収率40-71%で得られた。本反応の不斉収率はγ位の置換基に依存し、γ位に4-メトキシベンゾイルオキシメチレン基が存在する場合に最高不斉収率97%eeでジオールが得られた。脂肪族置換基を有するアリルホスホナートのAD反応においてはジエチルホスホナート基をジベンジルボスホナート基に変えることにより不斉収率を向上させることが出来た。さらに、1回の再結晶により光学的に純粋な純粋なジオールが得られることを明らかとした。ジオールを環状硫酸エステルに導き、NaN_3と処理すると、γ-アジド-β-ヒドロキシホスホナートが高位置選択的に得られた。γ-アジド体をγ-アミノ-β-オキシホスホナートへ変換し、窒素原子のジメチル化を経てキラルなγ-アミノ-β-アシルオキシホスホン酸を合成した。これまでに、上記の手法により誘導体3個を合成することが出来た。今後、誘導体の合成を継続すると共にL-CPT I阻害活性評価を行い、絶対配置およびγ位置換基に関する構造活性相関を明らかにしていく予定である。
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