研究概要 |
大麻主成分の内分泌撹乱作用並びにその作用機構について以下の検討を行った。 1.大麻主成分であるカンナビノイド3種[Δ^9-tetrahydrocannabinol(THC),cannabidiol(CBD),cannabinol(CBN)]のprogesterone 17α-hydroxylase(17α-OHase)阻害作用について、ラット精巣ミクロソームを用いて検討した。酵素活性はカンナビノイドの添加により有意に阻害され、その阻害作用の強さはCBN>Δ^9-THC>CBDであり、非幻覚成分であるCBNが最も強い作用を示した。さらに、速度論的解析によりCBNは競合型阻害を、Δ^9-THC及びCBDは混合型阻害を示すことも明らかにした。また、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素活性に対しても副腎ホモジネート及び精巣ミクロソームを用いて同様の検討を行った。精巣ではCBDのみが有意な阻害作用を示したのに対し、副腎では3種のカンナビノイドとも有意な阻害作用を示した。副腎における阻害作用の強さはCBD>Δ^9-THC>CBNであり、17α-OHase活性に対する阻害作用と対照的な結果となった。 2.ラット精巣間質細胞を単離し、カンナビノイド添加によるテストステロン生成量の変化をELISA法により測定した。hCG添加によりテストステロン産生を刺激した間質細胞に対して、3種のカンナビノイドは5μM以上の添加で有意にその生成量を減少させ、カンナビノイドはテストステロン生合成阻害作用を有すると考えられた。 3.カンナビノイドのエストロゲン様作用についてヒト乳癌細胞MCF-7を用いてエストロゲン増殖検定法であるE-スクリーン法により検討した。その結果、3種のカンナビノイドはMCF-7に対して増殖作用を示さず、むしろ高濃度では細胞毒性による増殖阻害が認められた。
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