これまで既に薬物を認識・輸送するトランスポーターのcDNAが単離され、その基質認識性が明らかにされてきたが、今なお殆どの薬物について関与するトランスポーターが見同定である。本研究の目的は、複数のトランスポーターcDNAのin vitro発現系を用いて発現レベルと輸送活性の定量的関係を明らかにし、それらを比較することによって、薬物体内動態における薬物トランスポーターの関与を迅速に評価するシステムを構築することにある。本年度は、293細胞に異なる量の有機カチオントランスポーターOCTN1遺伝子を導入し、細胞膜への送達と発現量レベルを、免疫染色およびをウエスタンブロット解析により、同時に輸送活性をテトラエチルアンモニウム取り込み活性により評価した。その相関から、日本人健常人ボランティアに見出されたcDNA一塩基多形により輸送活性が顕著に減少することを明らかにすると共に、有機カチオン性薬物の体内動態変動に影響を与える可能性を示唆することが出来た。同じく有機カチオントランスポーターであるOCTN2についても解析を行い、輸送活性の制御に関わるPDZタンパク質を同定した。更に同定したPDZタンパク質であるPDZK1とOCTN2タンパク質のC末端4残基のアミノ酸配列が重要であることも突き止めた。また、未変化体で60-70%が尿中排泄され新規ループ利尿薬として開発された薬物について、その腎尿細管基底膜における取り込み輸送を担うトランスポーターの同定を試みた結果、有機アニオントランスポーターのOAT1が一部関与することを明らかにすることが出来た。
|