ヒトおよびマウスにおける鎮痛閾値(痛みに対する感受性)には日周リズムが認められる。このため、鎮痛閾値の日周リズムを考慮し鎮痛薬を投薬することによって、より効率の良い疼痛治療が可能になると考えられる。 一般に、生体機能の日周リズムは明暗周期、摂食、睡眠などの環境因子の影響を受けて変化することから、時間治療を行う上で患者個々の生活スタイル(リズム)にマッチした至適投薬時刻を設定することが重要となる。しかしながら現在、疼痛治療においては至適投薬時刻を設定するための指標(リズムマーカー)はほとんど同定されておらず、時間治療の実践には至っていない。生体機能および薬理作用の日周リズムの制御機構を明らかにすることがリズムマーカーを同定するための第1歩と考えられる。 Morphineは、癌性疼痛治療に用いられる強力な鎮痛薬である。生体の鎮痛閾値の日周リズムに伴って、Morphineの鎮痛効果にも日周リズムが認められることが過去に報告されている。 そこで、Morphineの至適投薬時刻の設定を指向した基礎的研究を行い、Morphineの鎮痛効果の日周リズム制御機構には内因性glucocorticoidの分泌の日内変動が関与していることを明らかにした。 更に、Morphineが奏効しない神経因性疼痛の日内変動に着目し、その日周リズム制御機構について検討したところ、神経栄養因子の関与が示唆される結果を得た。今後更に、神経栄養因子をリズムマーカーとする神経因性疼痛の至適投薬タイミング設計の必要性を検討する予定である。
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