まず本年度は、ヒト造血幹細胞を含む画分である骨髄由来CD34陽性細胞において最も高い転写活性を示したCAプロモーター(cytomegarovirus由来エンハンサーおよびβ-actinプロモーターにβ-actinのイントロンを加えたプロモーター)を搭載した35型アデノウイルス(Ad)ベクターを用いて検討を行った。CAプロモーターを搭載した35型Adベクターにより遺伝子発現を示したCD34陽性細胞が自己増殖能ならびに分化能を有しているかどうかについてcolony-formingアッセイを用いて検討したところ、遺伝子発現細胞は未処理細胞とほぼ同程度のコロニーを形成した。また遺伝子発現細胞においては、最も未分化な細胞由来のコロニーであるCFU-Mixコロニーの形成も観察された。従って35型ベクターは造血前駆細胞にも遺伝子導入可能であること、また遺伝子発現細胞は自己増殖能および分化能を有していることが明らかとなった。 35型Adベクターを用いることでヒト造血幹細胞に対し高効率な遺伝子導入が可能になったことから、自己複製関連遺伝子を導入し、造血幹細胞の自己複製を試みた。自己複製関連遺伝子としては、HoxB4およびBmi1を選択した。ヒト骨髄由来CD34陽性細胞に対し、35型Adベクターを用いてこれらの遺伝子を導入したところ、有意な自己増殖促進は見られなかった。現在、これらの遺伝子の発現レベルを調製することにより自己増殖促進が観察されないかどうか検討するとともに、その他の自己複製関連遺伝子について検討中である。
|