研究概要 |
カハールの介在細胞(ICC)の神経伝達における役割を解明するための研究を行った。 1,ICCと神経終末の関係を定量的に検討した。マウス小腸カハールの介在細胞(ICC-DMP)と神経終末を共焦点レーザー顕微鏡により単一光学切片像とし、ICCに近接した神経終末を計数した。全終末のマーカーにsynaptotagmin、興奮性終末のマーカーにvesicular acetylcholine transporterとsubstance P、抑制性終末のマーカーにnitric oxide synthaseとvasoactive intestinal peptideを用いた。全ての場合で神経終末の7〜8割がICCに近接しており、両者の深い関係が示唆された。 2,Substance P含有神経がICCを支配することを機能的に証明する実験を行った。Substance P神経がマウス小腸において全てのICC-DMPに近接することを観察した後、substance P受容体(NK1受容体)が全てのICC-DMPに発現することを明らかにした。次にsubstance P投与により受容体が内在化(internalize)することを確認した。フィールド刺激による神経刺激を行いsubstance Pを放出させた後にNK1受容体変化を観察した結果、ICC細胞内に内在化した。この変化はテトロドトキシンによる神経伝達遮断とNK1受容体拮抗薬WIN62577を用いた場合に観察されなかった。これらよりICC-DMPはsubstance P神経に機能的に支配されると結論づけ発表した(Iino et al. J Physiol,2004)。 3,ICCのアセチルコリン受容能力を検討した。ムスカリン性受容体M2の分布をモルモットで検討したところ、小腸ICC-DMPに発現することをNK1受容体との2重染色と電子顕微鏡により明らかにした(投稿準備中)。 4,ICCの一酸化窒素NO受容能力を検討した。NOは標的細胞内で可溶性グアニレートシクラーゼ(GC)を活性化しcGMPを産生する。筋層内ICCのほぼ全てと筋層間ICCの一部にGCβ1免疫活性が観察された。
|