本年度は、前年度の結果をふまえ雌マウス生殖腺の遺伝子発現プロファイル情報を加えることで、雌雄の減数分裂期に共通して特異的に発現する遺伝子の網羅的同定を行った。その結果、雌雄の生殖腺で減数分裂時期に発現が10倍以上強い124遺伝子を同定した。このうち未知の遺伝子は74遺伝子あり、この中から新規の減数分裂関連遺伝子を選抜する目的で、これらの遺伝子がコードするタンパクの機能ドメイン情報を検索した結果、酵母で減数分裂に必須の機能を持つことが知られるHop1と共通のドメインを持つ2つの機能未知遺伝子(HORMAD1、HORMAD2)を見いだした。この2つの遺伝子はどちらも第一減数分裂前期の精母細胞に特異的に発現することをRT-PCRおよびin situ hybridizationにより確認した。さらにこれらの遺伝子をGFP融合タンパクとして培養細胞に発現させ細胞内局在を観察したところ、両者とも核に存在した。特にHORMAD1は、分裂間期の核内でクロマチンと一致した分布を示し、さらに分裂期の染色体上に局在した。この結果から、HORMAD1が減数分裂時にも染色体に結合し、減数分裂期に特異的な染色体動態に関与する可能性が高いと考えられた。またシナプトネマ複合体の構成成分であるSycp3とHORMAD1とHORMAD2を共発現させると、HORMAD2のみが核内で共局在を示した。以上の結果は、HORMAD1とHORMAD2が減数分裂時の染色体動態の制御に関与する可能性を示すと共に、それぞれが異なる機能を担うことを示唆する。さらに実際の減数分裂時の細胞内局在の観察を可能にするため、これらの分子に特異的な抗体を作製し解析を進めている。
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