すべての体細胞でCx45を欠損(Cx45-KO)、心筋特異的にCx45を欠損(Cx45-CA)、血管内皮特異的にCx45を欠損(Cx45-Tie2)したマウス胎児の表現型を比較して次の所見を得た。 1.Cx45-KOマウスは心筋伝導障害と心内膜床形成障害を示し、心内膜に発現するCa^<2+>依存転写因子Nfatclは細胞質型(不活性型)であった。胎児は10日で致死。 2.Cx45-CAマウスは心筋伝導障害を示すが心内膜床形成障害を示さず、心内膜のNfatclは核型(活性型)であった。胎児は!0日で致死。 3.Cx45-Tie2マウスは心筋伝導障害も心内膜床形成障害も示さず、心内膜のNfatclは核型(活性型)であった。マウスは異常を示さず成獣になった。 さらに、もうひとつの心筋コネキシンであるCx43を欠損させて表現型を比較したところ、 4.Cx43-KOかつCx45-KOの遺伝子型を持つマウスは、Cx45-KOマウスと同一の表現型を示すことが明らかとなった。 次に、心筋に特異的に発現し、心筋収縮に必須である心筋トロポニンTを欠損(cTnT-KO)したマウスを作製して、次の所見を得た。 5.cTnT-KOマウスでは、心筋収縮はみられず、心内膜床形成障害を示し、心内膜のNfatclは核型(活性型)であった。胎児は10日で致死。 以上の所見から、胎児における初期の心拍動では、心筋細胞間のギャップ結合蛋白としてCx45が最も重要であることがわかった。さらに、心内膜床形成障害は、Cx45が心筋層と心内膜層の双方で欠けたときにのみみられることがわかった。cTnT-KOは胎児の発育障害による二次的な心内膜床形成障害を示すが核型のNfatcl発現パターンを示すことから、Cx45-KOにおける心内膜床形成障害は発育異常による二次的なものではない。以上の所見をもとにより精密な分子機構の解析を進めている。
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