マウス8〜10日胚の心臓領域をビデオ記録し、Cx43・Cx45・心筋トロポニンT(cTnT)遺伝子変異マウスにおける拍動異常を記述する過程において、野生型の胚における正常な心臓発生の過程も明らかとなった。マウスの3体節期に心拍動が開始することに統計的な記述がなされた報告は過去になく、ビデオ撮影から明らかになった詳細な拍動様式とともに論文をまとめて報告した。正常胚の拍動パターンを記述したこの報告をもとに、遺伝子変異マウスの表現型を以下のごとく取りまとめて論文として発表する予定である。 心筋に特異的に発現するcTnT欠損マウスは、心筋収縮を示さず胎生10日で死亡した。電子顕微鏡所見及び免疫組織化学所見から、cTnT欠損心筋では太いフィラメント・細いフィラメントが双方存在するにもかかわらず、トロポニン複合体が細いフィラメント上に形成されないことが判明した。そのことにより、フィラメント間のすべりが制御不能となりサルコメア構造物が解離して表現型を引き起こすと考えられた。 また、特異条件下Cx45欠損マウスとCx43欠損マウスを組み合わせ、初期心拍動と心内膜床の形成に関して、Cx43の関与は薄いこと、Cx45が心筋層において欠損したときに心筋伝導障害が起こること、及びCx45が心筋層と心内膜層の双方で欠けたときにのみNfatclの不活性化による心内膜床障害が起こること、を明らかにした。心拍開始期のcTnT欠損心筋においてCa測定をしてみたところ、細胞間で協調したCa変動を測定できた。このことは心拍開始期のギャップ結合の存在を示しているが、Cx45欠損心筋でも心拍開始期には協調収縮が見られることから、それはCx45によるものではない。現在、そのギャップ結合の所在を探求すべく新たな研究が進行中である。
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