研究概要 |
1.ラット単離胃底腺を作製し形態観察を行なった結果、単離された胃底腺の多くが試料作製時のコラゲナーゼ処理等によって、腺の一部で分断されることが判明した。そこで、我々はコラゲナーゼ処理等を必要としない単離胃粘膜モデルの開発に着手し、より生体の胃粘膜に近い組織形態を保ちながら、ヒスタミン等の試薬に速やかな反応性を示す「ラット単離胃粘膜モデル」の開発に成功した。そして、ヒスタミン刺激壁細胞の動態を解析した結果、従来の化学固定法では捉えられなかった「細管小胞が頂上膜に融合する像」を高圧凍結技法の良好な微細形態保持によって明確に捉えることに成功した。このラット単離胃粘膜モデルでは副細胞や主細胞などの形態も良好に保たれており、胃粘膜研究の新たな実験モデルとしてさらなる応用が期待される。 2.動物試料に高圧凍結を施す際に、従来は主に既製のアルミニウム製キャリアが使用されてきたが、アルミニウムの強度で2,100barの高圧に耐えるためには少なくとも100μmの厚さを必要とし、ラット胃底腺を試料とした我々の経験では平均して40-50μmの硝子様凍結深度を得るにとどまっていた。そこで、強度に優れたステレンスの特性に着目し、厚さ10μmのステレンス箔から作製した直径3mmのプレートを組み合わせたキャリアを独自に考案した。試用の結果、10μmのステンレス製プレートは2,100barの高圧にも耐えて変形せず、平均して70-80μm、胃底腺表層部では120μmを超える硝子様凍結深度が得られたため、「ステンレス箔を用いた新たなサンプルキャリアの開発」として論文報告した。今後、高圧凍結技法による動物試料の微細形態解析がさらに促進されるものと期待される。
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