研究課題
組織や器官の再生においては血管系の新生・再生が不可欠であり、その機序を理解する事は極めて重要である。我々は新生血管の発芽機構について、特に血管内皮細胞周囲に存在するペリサイト(周皮細胞)の役割に着目して形態学的解析を進めてきた。背部皮膚に創傷を作成した創傷治癒モデルマウスを用い、内皮細胞マーカー(トマトレクチン、CD31)、ペリサイトマーカー(NG2 chondroitin sulfate proteoglycan)、および増殖細胞マーカー(BrdU)を用いて創傷部組織を多重免疫染色し、共焦点レーザー走査顕微鏡で三次元的に検索したところ、血管新生部に認められるほとんどの発芽中の新生内皮細胞にペリサイトが付随する事が明らかとなった。また、マウス腫瘍モデル(Lewis lung carcinoma細胞(3LL-MEIA株)を皮下移植)を用いて、創傷治癒モデル動物と同様の方法で内皮、ペリサイト、BrdUの分布を追跡したところ、ほとんどの新生内皮細胞にペリサイトが付随しており、創傷治癒モデルと極めて類似の所見が得られた。さらに、創傷治癒モデルを用いて血管内皮細胞と血管内皮増殖因子VEGF-Aに対する免疫染色を併せて行ったところ、VEGF-Aは線維芽細胞様細胞や、血管壁のペリサイトに分布することが明らかとなった。以上の結果から、血管新生の場においてペリサイトは内皮細胞の発芽部に密接し、血管内皮増殖因子VEGF-Aを産生することで、内皮細胞の発芽を積極的に誘導することが強く示唆された。この結果は、ペリサイトの生理的意義の新しい一面を示唆するとともに、内皮のみならずペリサイトをターゲットとして、血管新生の抑制を図る新たな方法を開発し、がん治療などに応用していく可能性も含むものと考えている。
すべて 2005
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