高血圧は、腎糸球体硬化や間質の線維化などの腎障害の進展に関連していることが示されている。近年高血圧病態において活性酸素産生酵素であるNADPHオキシダーゼが関与することが示唆されてきた。我々は食塩感受性高血圧のモデルであるダール食塩感受性ラット(DSラット)において、高食塩負荷により腎皮質でのNADPHオキシダーゼの発現が上昇することを見いだした。そこで本研究課題では、高血圧性臓器障害の分子機序およびその進展における活性酸素の役割について検討した。4週間高食塩食(8% NaCl含有)を与えたDSラットでは、腎皮質におけるNADPHオキシダーゼ活性の上昇および尿中過酸化水素排泄量の増加とともに、腎糸球体硬化症、蛋白尿などの腎障害が観察された。チオール含有抗酸化剤であるN-アセチルシステインを投与した高食塩負荷DSラットでは、血圧の上昇、糸球体硬化、蛋白尿は抑制され、活性酸素がDS高血圧ラットの腎障害に重要な役割を果たしていることが明らかとなった(Zhang et al.Free Radic Biol Med 2004)。 さらに、DS高血圧ラットの腎皮質では、マクロファージ走化性因子であるMCP-1の発現が増加していた。MCP-1は変性した尿細管細胞に強く発現し、NADPHオキシダーゼのサブユニットp47phoxの発現と関連していた。N-アセチルシステイン投与は、MCP-1の発現上昇を抑制し、腎皮質間質へのマクロファージの浸潤や腎糸球体硬化を抑制した。以上のことから、DS高血圧ラットの腎臓では、NADPHオキシダーゼが産生する活性酸素(過酸化水素)がMCP-1の発現上昇を惹起し、それがマクロファージの浸潤を介して糸球体硬化や間質の線維化などの腎障害に関与していると考えられた(投稿中)。
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