クロライドチャネル(Clチャネル)は、膜興奮や細胞容積、物質輸送などに関与し、心筋細胞でも7種類のClチャネルを介した電流(Cl電流)が報告されている。我々は細胞外ATPで活性化する心筋Cl電流を報告(1992年)して以来、この電流はプリン受容体(P2Yタイプ)のCFTR Clチャネル活性化と考えているが、詳細な細胞内情報伝達系は未だ不明である。細胞外ATPは病態生理学的に重要であり、本研究では電気生理学的薬理学的手法にてプリン受容体のClチャネル調節における細胞内情報伝達系の解明を目的としている。平成16年度の研究成果は以下である。 1)[心筋細胞の細胞外UTPにより活性化されるCl電流]P2Y受容体サブクラスを明らかにするため、複数のヌクレオチドによるCl電流を比較検討した。結果、UTPはATPと同程度の作用があるが、ADP、UDPは充分な活性化を起こさなかった。更にP2Y受容体拮抗剤の感受性結果と併せるとP2Y_2タイプと示唆された。 2)[Gq/11蛋白-PLC-PKC系の関与]抗Gαq/11抗体の細胞内還流では細胞外UTPのCl電流活性化が抑制された事からP2Y_2受容体に結合するG蛋白はGq/11タイプと示唆された。更にPLC又はPKC抑制剤の実験から細胞外UTPの刺激はGq/11蛋白-PLC-PKC系の存在が示唆された。 3)[ATP加水分解反応の関与]ATP非水酸化アナログの細胞内還流実験で、細胞外UTPによるCl電流の活性化は著しく抑制され、ATP加水分解による調節機構の存在が示唆された。この結果はCFTRチャネルの活性化による説を支持するものである。 以上、プリン受容体刺激で活性化するCl電流はGq/11蛋白-PLC-PKC系を介したCFTRチャネルの活性化と考えられる。しかし複数の情報伝達系の存在を示唆する実験結果もあり、次年度では更に詳しく検討する予定である。
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