研究概要 |
研究代表者はこれまでに後肢皮膚の侵害刺激が卵巣交感神経を介して卵巣血流を調節することを明らかにしてきた.この反応は反射性反応と考えられるが,その反射の中枢内経路は不明である.体性一交感神経反射は一般に肢の刺激で顕著に現れる上脊髄反射と脊髄分節領域の刺激で誘発される脊髄反射とがある.そのため,卵巣交感神経の出力する胸髄下部に入力する腹部の皮膚刺激が脊髄を介して卵巣交感神経さらには卵巣血流を調節する可能性が考えられる.そこで,本年度の研究では中枢無傷ラット及び急性脊髄切断ラットを用いて,後肢と腹部の皮膚刺激が卵巣血流に及ぼす効果とそれらの反応の中枢内経路を調べた. 麻酔下非妊娠雌ラットを用い,左卵巣血流をレーザードップラー血流計で連続測定した.左卵巣交感神経遠心性活動を記録した.左側の後肢足蹠あるいは腹部の皮膚に機械的侵害刺激を加えた.脳と卵巣交感神経との連絡を絶つために,胸髄上部で脊髄を切断した. 後肢刺激は,中枢無傷ラットにおいて卵巣交感神経活動を亢進させ,卵巣血流を減少させた.これらの後肢刺激による反応は急性脊髄切断ラットにおいてほぼ消失するので,上脊髄反射と考えられる.腹部刺激は中枢無傷ラットにおいて卵巣交感神経活動を亢進させ,卵巣血流を減少させた.これらの腹部刺激による反応は急性脊髄切断ラットにおいても認められるので,脊髄反射と考えられる. 以上の結果から,後肢及び腹部の皮膚刺激により卵巣血流に交感神経を介した皮膚-卵巣反射が起こること,この反射には脳を介する反射と脊髄分節性の反射が存在することが示された.
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