前年度の検討において、マウス心室筋で観察されるエンドセリン-1(ET-1)の陰性変力作用がNa^+/Ca^<2+>交換体の活性化によるCa^<2+>排泄能の増大による事を見出したが、今回、細胞内Ca^<2+>トランジェントと細胞収縮との関係を詳細に検討したところ、ET-1による陰性変力作用には、収縮タンパクCa^<2+>感受性の低下を介する成分も存在する事が明らかになった。そのCa^<2+>感受性の低下作用はNa^+/Ca^<2+>交換体の活性化とは異なり、プロテイン・キナーゼC阻害薬の存在に影響を受けなかった事から、ET-1による変力作用には複数の細胞内情報伝達経路を介した制御が働いている事が示唆された。 ET-1の変力作用に対する加齢の影響についても検討を行った結果、老齢マウス(80〜90週齢)の心筋細胞においては、若齢マウス(6〜10週齢)と比べて、ET-1によるCa^<2+>トランジェントのピーク値の減少と細胞収縮の抑制作用が減弱している傾向が観察された。一方、ET-1の収縮タンパクCa^<2+>感受性の低下作用については、若齢-老齢マウス間で変化は見られなかった。この結果は、ET-1によるNa^+/Ca^<2+>交換体制御の興奮収縮連関に対する機能的な寄与が加齢に伴って減少する可能性を示唆する物である。その機序について検討するため、Na^+/Ca^<2+>交換体の発現量が加齢に伴って減少する可能性について検討中である。
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