心臓の自動拍動やその収縮には細胞内Ca^<2+>動態が重要な役割を果たす。この細胞内Ca^<2+>動態には細胞表層膜の電位依存性Ca^<2+>チャネル(L型、T型)、Na^+-Ca^<2+>交換機構(NCX)や細胞内小胞体のリアノジン受容体(RYR)が寄与する。本研究課題の中心である心臓自動能におけるRYRとその結合タンパクの役割を検討するために今年度は以下について検討を行った。 1.去年度から継続して行っている特異的干渉RNA(siRNA)やアンチセンスoligoを用いた実験系を培養細胞系にて確立させた。系を確立させるにあたって派生した研究ではあるが、心臓自動能領域にも発現しているK^+チャネルについて新知見が得られたので日本薬理学会(2005年度年会、2005年度北部会)にて報告した。現在は心筋細胞に遺伝子導入するためのウイルスベクターを用いた系の確立を検討中である。 2.去年度から継続して異常自動能に関与する可能性のある細胞内の新規タンパク質についてその生体内での役割を解明するためにノックアウトマウスを用いた検討を行った。ノックアウトマウスと野生型マウスの単離心室筋細胞で、電気生理学的手法や細胞内Ca^<2+>測定、また分子生物学実験にて比較・検討を行った。その結果、ノックアウトマウスの心室筋細胞は(1)beta刺激に対する感受性が低下していた(2)外向きK^+電流密度が野生型マウスに比べて小さかった。これらの結果は日本生理学会(2005年度年会)にて報告した。 3.本年度は残念ながらRYRの結合タンパクではなかったが、既知の生体内物質が心臓自動拍動の調節に寄与する可能性を得た。現在、Ca^<2+>蛍光色素のみならず膜電位色素などを用いたイメージング解析を手法として、心臓自動拍動への作用メカニズムを検討中である。
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