研究課題
本研究では、神経因性疼痛と炎症性疼痛の動物モデルを作製し、脊髄における疼痛伝達機構の相違や共通因子の検策を試みた。両疼痛モデルに対して選択的protein kinase C(PKC)阻害薬を繰り返し髄腔内処置したところ、神経因性疼痛モデルにおける熱痛覚過敏反応は有意に抑制されたのに対し、炎症性疼痛モデルにおいてはそのような抑制作用は認められなかった。また、両疼痛モデルから得られた脊髄細胞膜分画標本および脊髄凍結切片を用いて、Western blot法ならびに免疫染色法に従いPKCタンパク量や免疫活性の変化について検討したところ、神経因性疼痛モデルにおいてのみ脊髄後角表層部において活性型PKC免疫活性の増強が認められ、またPKCγタンパク量の有意な増加が認められた。そこで、PKCγ遺伝子欠損マウスを用いて両疼痛発現におけるPKCγの関与について検討したところ、神経因性疼痛モデルにおける熱痛覚過敏反応は著明に抑制されたのに対し、炎症性疼痛における熱痛覚過敏反応はほとんど抑制されなかった。一方、両疼痛モデルの脊髄におけるprotein kinase A(PKA)の役割について検討した結果、炎症性疼痛モデルにおける熱痛覚過敏反応は、選択的PKA阻害薬の繰り返し髄腔内処置により有意に抑制され、脊髄膜標本におけるPKAのタンパク量は対照群と比較して著明に増加した。さらに、脊髄後角表層部において活性化型PKA免疫活性の有意な増強が認められた。しかしながら、神経因性疼痛モデルにおいては、そのような抑制作用ならびに免疫活性の変化は認められなかった。これらのことから、神経因性疼痛には脊髄のPKCに依存した疼痛伝達機構が、一方、炎症性疼痛には脊髄のPKAに連関した疼痛伝達機構が存在することが明らかとなった。以上の本研究の結果により、神経因性疼痛と炎症性疼痛の脊髄を介した疼痛伝達機構には異なる細胞内情報伝達系が関与している可能性が示唆された。
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