申請者はポリ(ADP-リボース)分解酵素(PARG)の遺伝子破壊ショウジョウバエを作成し、PARGの欠失が晩発性、進行性の神経変性を引き起こすことを既に報告した。本研究によって、さらに、PARG遺伝子破壊ショウジョウバエの脳神経細胞内部に顆粒状の蓄積物の存在を発見し、抗ポリ(ADP-リボース)抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察によりポリ(ADP-リボース)は主にその顆粒に存在していることを明らかにした。これはポリ(ADP-リボース)の神経細胞内部での蓄積が神経変性の直接の原因となった可能性を示唆する。 また、ポリ(ADP-リボース)合成はDNA損傷後に極めて顕著な反応であり、PARGがDNA損傷後の反応に関与している可能性が示唆されてきた。申請者は、PARG遺伝子破壊ショウジョウバエの幼虫にガンマ線照射、および、DNA損傷物質投与を行った。ところが、DNAダメージ後の発生・生存率を測定したところ、PARG遺伝子破壊ショウジョウバエは野生型よりもDNAダメージへの感受性が低く、高い発生・生存率を示した。これは、PARGがDNA損傷後の細胞応答に不要であるか生存を抑制する働きがある事を示唆する。これらの成果は2004年に開催されたADP-リボシル化に関する中心的な国際シンポジウムである「第53回藤原セミナー」において発表した。
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