研究概要 |
本研究は、スキャッフォールド蛋白質(アダプター蛋白質)の新しい機能、すなわち免疫系においてリガンドとして細胞質型チロシンキナーゼを活性化することや、部位特異的な転写因子制御機構を有することに着目したものである。スキャッフォールド蛋白質によるこのような機能は未開拓であり、本年度は肥満細胞・T細胞における転写因子活性化、サイトカイン産生への関与について解析を行った。さらに3BP2遺伝子の異常と蛋白質の機能異常との関連やヒトの遺伝病cherubismの病態への影響について解析し、研究計画をほぼ達成した。 1、スキャッフォールド蛋白質3BP2の機能解析:ヒトT細胞を用いてスキャッフォールド蛋白質3BP2のsiRNAによるノックダウンを行い、T細胞受容体を介する転写因子NFAT活性化に3BP2がエッセンシャルな役割を担うことを明らかにした。また3BP2のリン酸化部位であるチロシン183がVav1-Rac1経路を、チロシン446が上流に位置するLckチロシンキナーゼに会合し、それぞれが異なるNFAT活性化シグナルを調節することを明らかにした(Qu et al., Biochemistry 2005)。 2、スキャッフォールド蛋白質としての機能を有するユビキチンリガーゼCb1-bの機能解析:脂質ラフトに恒常的に発現するCb1-bキメラ分子を用いて、Cb1-bが肥満細胞活性化の負の調節因子であることや、ユビキチンリガーゼ依存性と非依存性の2つのメカニズムでIgEを介する脱顆粒反応とサイトカイン産生を抑制することを明らかにした(Qu et al., Blood 2004)。また、Cb1-bの標的分子であるスキャッフォールド蛋白質Gab2のチロシンリン酸化を選択的に抑制する薬剤としてフェノキサジン誘導体Phx-1を見出した(Enoki et al., J.Pharmacol.Sci.2004)。 3、スキャッフォールド蛋白質とヒトの遺伝病との関連:ヒトの遺伝病cherubismで同定された変異型3BP2が、チロシンキナーゼLynのリガンドや転写因子NFATの活性化調節因子としての機能を失っていることを見出した。さらに、Cherubismで同定された3BP2遺伝子上の点突然変異の違いにより、細胞内シグナルに対して異なる影響が見られることも同時に明らかにした(Miah et al., Genes Cells 2004)。
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