アダルトマウス、成牛、成熟ラットならびに成熟ブタの全脳より抽出液を作成し、これらを比較検討したところ、マウス以外の成熟脳抽出液中にもアダルトマウスと同様にApaf-1の活性を特異的に阻害する因子が存在することが確認できた。そこで成牛成熟脳抽出液をクロマトにより分離したところApaf-1の活性を特異的に阻害する因子はいくつかの画分に分離されることがわかった。このうちの1つについてさらに精製を進め、イムノブロット法、吸光度分析法などにより解析したところ、この画分には本来Apaf-1を活性かさせるシトクロムC自体が存在することが確認された。シトクロムCがApaf-1の活性を特異的に阻害する因子としても働きうることを、精製因子を用いたProcaspase-3の再構成アッセイ系を用いて詳細に検討した。その結果、Apaf-1が活性化される際、これと相互作用するいくつかのタンパク質には結合すべき順序があることがわかった。現在のところ精製Apaf-1へのシトクロムC単独の結合は不可逆的にApaf-1の活性を阻害することを確認した。現在この機構についても詳細に検討を進めている。 また実験者はアダルトマウス脳では脳の領域によりアポトーシス感受性が異なることにも着目し、成熟脳を海馬、大脳皮質、小脳の3つの領域に分離、これらの各々の領域から抽出液を作成し、これらに含まれるApaf-1活性を特異的に阻害する因子の阻害活性能について比較検討を行っている。その結果、これらの3つの領域のうち小脳でもっともこの阻害因子の活性が強いことを確認した。このことは成熟脳では領域によりApaf-1活性を抑制する機構に差異があり、その結果として各領域におけるアポトーシス感受性が異なる機構が存在していることを示している。そこで領域による阻害活性能の違いが具体的にどのような因子によるものか、またこの機構が虚血時におこるアポトーシスに関与するのかどうかを含めさらに検討を進めている。
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