成牛の全脳とアダルトマウスの全脳より各々の粗抽出液を作成し、精製因子を用いたProcaspase-3の再構成アッセイ系を用いてこれらを比較検討した。この結果、成牛成熟脳抽出液中にもマウス成熟脳抽出液と同様にApaf-1の活性を特異的に阻害する因子があり、これらの分離精製を試みた。この中の1つには本来Apaf級を活性かさせるシトクロムC自体が存在していた(イムノブロット法ならびに吸光度分析法により確認)。この阻害活性はマウス胎児脳粗抽出液中に見られる観察されるProcaspase-3の活性化も阻害し、より生理的条件下でもこの機構が働きうることが示唆された。また、熱耐性も高く、50度で加温処理した成熟脳抽出液でもマウス脳粗抽出液中のProcaspase-3の活性化抑制能を95%以上保持し、90度処理でも40%程度を保持することがわかった。これらのことからこの阻害機構が種を超えて普遍性が有る可能性ならびにシトクロムCの一部の熱に耐性をもつ配列がこの機構に関与しているのではないかと推測された。今後、シトクロムCのどの部分が、この機構に関与しているかを詳細に検討していきたい。一方、実験者は成熟脳を海馬、大脳皮質、小脳の3つの領域に分離、各々の領域から抽出液を作成し、これらに含まれるApaf-1活性を特異的に阻害する因子の阻害活性能について比較検討を行っている。一定の条件下、小脳でもっともこの阻害因子の活性が強いことを確認した。しかしながら各抽出液の抽出条件をより詳細に検討したところ抽出条件により前者の結果と異なる結果も確認されたことから、各領域でシトクロムCをめぐる環境が大きくことなることも予想された。この為、現在領域別の比較検討を行うにあたり抽出条件を含めて、より精度の高い比較検討を行う為の方法を検討している。
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