アスコルビン酸の生体内での機能として、抗酸化作用が広く受け入れられている一方、プロオキシダント作用も報告されている。そこで、酸化ストレスに対するアスコルビン酸の作用をL-ascorbic acid 2-O-phosphate(Asc2P)を利用して検討した。実験系としては細胞質内に大腸菌アルカリホスファターゼ(BAP)を発現させたCHO細胞を用いた。BAPは酵素活性にジスルフィド結合を必要とするので、生理的条件下の還元的な細胞質内では活性がない。したがって、その酵素活性の出現によってBAPのジスルフィド結合形成を観測できる。この系で細胞を過酸化水素処理すると、BAPのジスルフィド結合形成およびグルタチオンの酸化が起こった。過酸化水素処理前にAsc2P処理すると、BAPの活性化、グルタチオン酸化がともに増強された。しかし、Asc2P処理のみではジスルフィド結合形成に影響しなかった。過酸化水素処理時にはAsc2Pを取り除いており、細胞外液のアスコルビン酸は検出限界以下であること、また細胞内に取り込ませておいた鉄イオンキレーターがジスルフィド結合形成のAsc2Pによる増強分を抑制することから、アスコルビン酸による酸化ストレス増強効果は細胞内で鉄イオンとの相互作用によって起こると考えられた。さらに、タンパク質酸化の指標であるカルボニル化、細胞内過酸化物質についても同様の結果が得られた。
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