研究課題
糖尿病状態で促進的に形成される後期糖化反応生成物(advanced glycation endproducts、AGE)がAGE特異受容体(receptor for AGE、RAGE)を介して糖尿病に特徴的な血管病変を引き起こすことがin vitroおよびin vivoの系で明らかになった。RAGEは一回膜貫通型受容体で、その細胞外領域に2本のN-結合型糖鎖構造をもち、これらの糖鎖付加部位に挟まれたごく狭い領域がAGEリガンド結合部位である。本研究では、RAGEの糖鎖付加あるいは糖鎖構造がリガンドとの相互作用にどんな影響を与え、糖尿病合併症の発症・進展にどう関わるのかを明らかにする。平成16年度に以下の成果を得た。(1)RAGEの2箇所の糖鎖付加部位に変異を導入したRAGE cDNAsを得た。具体的には、2箇所とも糖鎖が付く野生型、それぞれ片方にのみ糖鎖が付くN端側N-結合型糖鎖付加部位変異導入型およびC端側N-結合型糖鎖付加部位変異導入型、両方に付かない両N-結合型糖鎖付加部位変異導入型の計4種類を作製した。(2)上記(1)の4種類のRAGE cDNAをpCI-neo mammalian expressionベクターに組み込み、COS-7細胞を用いて4種類の組換えRAGE蛋白を調製し、RAGE抗体アフィニティーカラムでそれぞれ高純度に精製した。(3)上記(2)で得られた4種類の組換え精製RAGE蛋白とAGEとの結合を表面プラスモン共鳴法(BIAcore2000)を用いて結合親和性を解析比較した結果、完全糖鎖修飾型(野生型)RAGEとAGE-BSAとの結合解離定数(Kd)は〜1μMであったが、N末端側から2番目のN型糖鎖結合部位への変異導入(C端側N-結合型糖鎖付加部位変異導入型)によって糖鎖が外れるとKd値が約1000倍低下する事実が得られた。以上の結果より、脱N型糖鎖によって、AGEリガンドのRAGEへの結合能が亢進することがはじめて明らかとなった。
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