本研究の成果および明らかになった事を以下に記す。 1.組換え後期過程の試験管内再構成系とヒトミトコンドリア抽出液の分画・精製 (1)組み換え中間体のモデル基質であるα-Structureと4way junctionの2種のDNAを作成。 (2)ヒト胎盤から得た高純度のミトコンドリア抽出液を調製した。 (3)ミトコンドリア抽出液に強いヌクレアーゼ活性を認めた。 2.高感度質量分析システムの構築 本研究の遂行を目的として微量分析用のLC-MSシステムによるミトコンドリア内のタンパク質同システムを構築した。免疫沈降やクロマトグラフィーなどで分画したミトコンドリア抽出画分をSDS-PAGEで分離し、そのゲル片からタンパク質を高感度で検出するシステムを構築した。 3.新規ミトコンドリアタンパクの同定と解析 (1)ミトコンドリアDNAの核様体構造(nucleoid)の主要タンパク質であるTFAMに対する抗体を用いた免疫沈降法によりnucleoidにクロスリンクするミトコンドリアタンパク質を同定した。その結果mtSSB、HSP60、Lon proteaseなどのミトコンドリアに局在することが知られている分子とともに、核のDNA polymeraseδのサブユニットと考えられていたPDIP38が同定された。 (2)PDIP38の局在を詳細に調べ、ミトコンドリアマトリクスに存在することを明らかにした。 (3)PDIP38がmtSSB、TFAMと直接相互作用することを免疫沈降法により明らかにした。 (4)PDIP38がミトコンドリアDNA polymeraseγと相互作用しないことがわかった。 (5)表面プラズモン共鳴によりPDIP38など同定された分子のDNA結合能を検討したところ、1本鎖DNA、2本鎖DNAに対する有意な結合は見られなかった。一方、ヒトHSP60が1本鎖DNAに結合することが明らかになった。
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