組織マイクロアレイ作成:脳腫瘍の組織マイクロアレイを作成した。膠腫(星細胞腫、乏突起細胞腫、上衣腫)約120例、膠芽腫約50例、髄芽腫約15例、髄膜腫・血管周皮腫約40例からなる組織アレイを構築した。 免疫組織学的検討:作成した組織マイクロアレイを用いて、免疫組織学的検討を行った。癌関連蛋白や脳神経発生・分化の標識蛋白をはじめとする、各種蛋白の発現の検討を行い、以下の2点を明らかとした。 1.神経細胞標識蛋白を高度に発現する二次性膠芽腫が存在することを明らかにした。同腫瘍では、初発の星細胞腫においても、同様の神経細胞標識蛋白を発現する腫瘍細胞が、少数ながら存在することが確認された。高度の髄腔内播種を特徴とする膠芽腫であり、臨床経過を鑑みても特異な一群として位置付け可能な腫瘍と考えられた。 2.単クローン抗体D2-40により認識されるムチン型糖タンパクpodoplaninが、各種脳腫瘍で発現していることを明らかにした。特に上衣腫、脈絡叢乳頭腫、髄膜腫ではほぼ全例で発現が認められ、対応する正常組織にも発現が確認されたことから、組織特異的と考えられた。上衣腫では特徴的なdotないしring状発現patternを示し、日常診断に応用しうる所見であった。また、星細胞系腫瘍では、podoplaninの発現と腫瘍の悪性度とに相関関係が認められた。他臓器の腫瘍でも、podoplaninの発現と腫瘍の悪性度、転移との関連が指摘されており、膠腫の悪性転化の機構を解明する上で、興味深い所見であった。
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