胃癌の外科手術材料を45症例検討した。リンパ節内のHelicobacter pylori(以下H.pylori)の状態を確認するために、培養法と定量PCRを用いた。培養には、リンパ節整理時に半割したリンパ節を懸濁させ用いた。定量PCRでは、培養に使用した懸濁液および、ホルマリン固定パラフィン切片から、DNA抽出した材料を解析した。胃癌に関しては、通常の診断業務に準じて胃癌取り扱い規約の各項目を評価した。また、非腫瘍部粘膜に関しては、通常のHE標本にて炎症や化生・萎縮を評価し、ギムザ染色と定量PCRによりH.pyloriの感染を確認した。 検討した45症例で胃にH.pyloriが感染していた症例は34症例(76%)、陰性11症例だった。H.pyloriの感染していた胃の所属リンパ節では、15症例(44%)からH.pyloriが培養された。感染陰性とされた症例でも2症例からH.pyloriが培養された。リンパ節からのH.pylori培養の有無で、癌の所見を比較すると、陽性症例では、進行癌が多く、癌が大きい傾向にあった。背景粘膜ではH.pyloriの感染量が多く、炎症が強い傾向にあった。培養陽性症例では、リンパ節への胃癌転移陽性の割合が高いが、H.pyloriの検出の有無によるリンパ節の形態学的変化は明らかでない。 H.pylori感染陰性症例のリンパ節からH. pyloriが培養されたことに関しては、胃粘膜の化生が進んでいたため、.胃の評価が偽陰性となった可能性がある。H.pylori感染陰性症例に関しては偽陰性を除外するため、より多くの切片でH.pylori感染を確認する必要があると考えられる。また、今後はH.pyloriのリンパ節内での局在を同定していく予定である。
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