研究概要 |
本年度の検索で我々は大阪の産科後送施設からインフォームド・コンセントの得られた15例の子宮破裂及び重度頸管裂傷症例を集めることができた。(出産時母体年齢;29歳から39歳(平均33.7歳)胎児娩出後子宮摘出までの時間;30分から19日) 摘出された子宮体部の動静脈についてHE,弾性線維染色、CD34,α平滑筋アクチン、ラミニン、VEGF, ss-DNA、Ki-67、D2-40、cD61,オキシトシンレセプター等を染色し娩出後の時間に沿って検討した。比較対象として子宮頚部上皮内癌のために摘出された未経産婦の子宮と、分娩後60日と7年の子宮とを用いた。 HEの検討により子宮血管は内膜側の血管と漿膜側では異なる変化を示すことがわかった。すなわち、子宮内膜側の動脈において、内弾性板は分娩5時間後に不完全ながらも出現し、著しい血管内皮の肥厚が認められる。分娩110時間後では血管内皮が血管内腔に突出するような形態をとる。しかし内皮の肥厚は分娩60日後には消失し内腔もほぼ円形となる。 一方、子宮漿膜側の血管では主として静脈に変化が認められる。分娩直後から静脈は血管内皮が内腔に突出するように強く迂曲する。そして静脈壁の弾性線維は分娩5時間後でかろうじて出現してくる。さらに分娩19日後では静脈壁内に2-3層にわたり弾性板が認められるようになる。分娩60日目後には周囲の平滑筋内に及ぶ放射線状の弾性線維が認められるようになりこの形態はその後年余にわたって残存することが分かった。 分娩三期の子宮は、その急速な収縮により拡大していた血管はおよそ1/8に収縮され強く迂曲する。そのために分娩直後の血管の変化は内膜側の動脈では循環不全の臓器で起こるものと同様の変化を示し、漿膜側の血管では静脈瘤等で起こるものと同様の血管壁の変化を示すことがわかった。
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