軟部腫瘍は間葉系細胞起源であるため、その大部分は上皮性分化が認められない。しかし滑膜肉腫や類上皮肉腫など、一部の腫瘍は上皮性分化を有することが知られている。このような背景をふまえて、われわれは滑膜肉腫に焦点を絞り、上皮性分化などの滑膜肉腫の特徴的な形態形成に関わる重要な遺伝子を見出すことを目標とした。対象としては、上皮様成分と線維肉腫様成分をあわせもつ2相型滑膜肉腫を用いて、その2つの成分に関する遺伝子の相違に関してオリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いて検索した。マイクロアレイはAmersham社のCodelinkのsystemを用い、約50000個の遺伝子の発現を検討した。前年度に検討したマイクロアレイで得られた遺伝子発現プロファイルをクラスター解析し、上皮様成分と線維肉腫様成分の遺伝子発現の相違を検討した。検討症例が少ないこともあり、明らかな差を有する因子を見出すことはできなかった。しかしながら、一部の上皮性分化に関与すると考えられている因子については、各成分の間で若干の差がみられた。これらの因子に関しては、次年度にノーザンブロット法やreal time定量的PCR法を用いてメッセンジャーRNAの発現の差を確認する。さらに免疫組織化学的検討も試みる。可能であれば、RNAインターフェアランス法用いて、siRNAを滑膜肉腫由来の培養細胞に導入することにより細胞増殖に対する影響を検討することを予定している。
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