研究概要 |
前立腺癌の免疫治療に有効な標的抗原としてTARPに着目して解析を行った。TARPの全アミノ酸配列からアルゴリズム解析ソフトを用いて、個人間のHLA class II抗原に制約を受けずに多数のHLA class II抗原分子に結合可能なことが予測された15残基のペプチドを2個合成した。健常人末梢血から分離したCD4陽性T細胞と樹状細胞をペプチドの存在下で共培養し、その後複数回の刺激を行ってTARPペプチド特異的ヘルパーT細胞ラインを5名の健常成人から樹立した。詳細なエピトープ解析からTARP1-14ペプチドはHLA-DR53拘束性に、TARP14-27ペプチドはHLA-DR1,DR9,DR13及びDR15拘束性にヘルパーT細胞を活性化させ、IFN-γあるいはGM-CSFなどのTH1サイトカインを分泌させた。このことはTARP14-27ペプチドが多数のHLA-DR分子に結合してヘルパーT細胞を誘導できるpromiscuous peptideであることを示している。樹立されたヘルパーT細胞ラインは、いずれもTARP陽性でHLA-DR分子を発現した腫瘍細胞(SKBr3,MCF7)を認識してサイトカインを分泌した。また樹状細胞にTARP陽性腫瘍細胞のライセートをパルスしたものを抗原提示細胞としてT細胞に添加するとT細胞は活性化してサイトカインを分泌した。このことは、今回明らかにされたTARP1-14とTARP14-27エピトープペプチドは、生体内で自然な形態で発生しうるnaturally processed antigenic peptideであることを示唆している。次に実際の前立腺癌患者末梢血中にTARPペプチドに反応するT細胞が存在するかどうかを検討した。7名の前立腺癌患者の末梢血PBMCを用いてTARPペプチドに反応するT細胞frequencyを検討すると、PSAの高値な進行した前立腺癌患者においてその頻度が高くなる傾向が認められた。
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