患者や疾患モデル動物における遺伝学的研究から、II型膜蛋白に属するレクチン型受容体が密集している染色体領域NKC(ヒト染色体12p13マウス染色体6)が自己免疫疾患の発症に関与していると考えられている。同様に、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するI型膜蛋白のSLAMファミリー受容体が密集している領域Sle1b(ヒト染色体1q23マウス染色体1)の関与も報告されている。樹状細胞は抗原提示細胞であり、自己免疫疾患においても重要な役割を果たしているが、上記の遺伝子座には樹状細胞に発現している受容体も多数存在しているが、それらの遺伝子の疾患発症における役割も不明である。 本研究の目的は、自己免疫疾患感受性染色体領域に遺伝子があり、樹状細胞に発現している細胞膜受容体を解析することである。これらの細胞膜受容体遺伝子の解析により、多因子疾患である自己免疫疾患の発症機序にこれらの受容体がどう関わっているかを知ることができる。まず、これらの遺伝子の発現と、多型を自己免疫疾患モデルマウスと、健常マウスで比較し、候補遺伝子を絞り込んだ。加えて、レポータージーンアッセイ用いた方法でリガンドを同定するべく、樹状細胞の受容体の細胞外部分と膜貫通部分にCD3ζ鎖の細胞質部分を繋いだキメラ分子をコードするコンストラクトを作成した。これを用いてリガンド発現細胞をスクリーニングするために、NFATで働くレポーター細胞を作成した。また、樹状細胞の受容体に対するモノクローナル抗体を作成し、自己免疫疾患モデルマウスに投与することにより、これらの受容体の自己免疫疾患発症における役割を解析した。作成した抗体の投与はモデルマウスの発症に明らかな影響を及ぼさなかったが、さらに他の受容体に対する抗体も作成している。
|