本研究では、生体の恒常性を担っている炎症性サイトカインが、神経系、免疫系、内分泌系を制御し、生体の恒常性を維持する分子機構を明らかにすることを目的として研究を行った。生体の恒常性を脅かすような外的ストレスによって脳内で誘導される炎症性サイトカインの役割を解明するために、遺伝子改変マウスを用いて、ストレス応答を検討した。IL-1 KOマウス、IL-6KOマウスを用いてストレス応答の指標として発熱応答、HPA axisの活性化を解析した。IL-1 KOマウスでは、IL-1を末梢投与した時に、脳内でIL-1が誘導されないにも関わらず、発熱が起こることを明らかにした。このことは、脳内で産生されるIL-1は必要でなく、それ以外の経路だけで、発熱反応が引き起こされることが明らかになった。さらに、IL-1の下流で発熱を引き起こす分子機構を明らかにするために、プロスタグランジン、IL-6について検討を行った。IL-6 KOマウスでは、これまでの報告通り、IL-1による発熱応答が見られないにも関わらず、プロスタグランジン合成酵素の発現誘導が起こることが明らかになった。これらの結果から、IL-1による発熱応答では、これまで考えられていたIL-6の下流でPGE2が誘導されるのではなく、PGE2の下流でIL-6が働いていることが明らかになった。本研究は、2004年度のEndocrinologyで発表した。さらに、IL-1の末梢投与によって引き起こされるHPA axisの活性化についても解析し、IL-1 KOマウスにおいて投与後6時間後のHPA axisの活性化が抑制されることを見出した。その分子メカニズムを解析した結果、内在性のIL-1の発現誘導が視床下部におけるCRHと血中IL-6の誘導を介して下垂体におけるPOMC発現を誘導し、HPAA axisの活性化に重要な役割を果たしていることを明らかにした。本研究は、2005年度のEndocrinologyで発表した。本研究課題の計画は、すべて、達成することが出来た。
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