研究概要 |
NASHは代謝・栄養障害が原因と考えられる肝障害で高度の脂肪沈着と繊細な線維化を特徴とする。本年度はヒト疾患肝、及び動物モデルを主な研究対象とし、病理形態学的、免疫組織化学的見地から発症・進展メカニズム解明を試みた。 1,NASH肝組織標本における検討 NASHの発症・進展には脂質過酸化反応等の複数のfactorによる2hit theoryが提唱されており、その指標として核DNAの80HdG化を免疫組織学的に半定量する方法が報告されている。我々はNASH肝では80HdGが核と同時に細胞質にも存在する事に気づき、これがミトコンドリア(Mt.) DNAの酸化障害を反映している事を明らかにした。80HdG陽性Mt.は形態変化(巨大化)を呈しており、Mt.機能異常による細胞障害メカニズムが示唆された。80HdGのMt.発現は核発現よりも早期に出現し、脂肪肝と進行性のNASHを鑑別する指標になると考えられた。(論文投稿中) 2,(1)高コレステロール食ウサギに出現するNASH類似病変 高コレステロール食を8-12週摂取したウサギに高頻度に肝障害が出現した。病理組織学的にはヒトNASHの特徴をほぼ全て備えており、脂質過酸化反応も著明に亢進していた。本モデルはnon-obese, non-insulin resistance statusであり、複雑なNASHの病態を解明する一助になると考えられた。(論文投稿中) (2)AGE受容体(Galectin-3)欠損マウスに出現するNASH類似病変 糖尿病の増悪因子として知られるAGEは種々の受容体を介して分解処理されている。AGE受容体の一つであるGalectin-3を欠損したマウスはAGE過剰蓄積による糖尿病の進展が報告されている。我々は本マウスが雄に有意に脂肪性肝炎を自然発症する事、及びその発症頻度が脂質過酸化促進物質(NNK)投与によって著明に亢進することを明らかにした。現在、コリン・メチオニン欠乏食投与による発症頻度や病態変化を長期観察中である(平成17年度継続)
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