1.細胞株の樹立 (1)ラットの不死化大腸上皮細胞株IEC-6に遺伝子導入によりGSK-3βによるリン酸化ドメインを欠きdegradationを受けない安定な変異β-cateninをTet-offの系をもちいて発現誘導可能な細胞株DN89β-catenin IEC-6 tet-offを樹立した。 (2)ヒト大腸がん細胞株DLD-1に遺伝子導入によりβ-cateninとの結合部位を欠きdominant negativeにTcf4の活性を抑制するtruncated Tcf4をTet-offの系をもちいて発現誘導可能な細胞株DN30tcf4 DLD-1 tet-offを樹立した。 2.細胞生物学的・病理学的特徴を解析する。 (1)樹立した細胞株の増殖速度はDN89β-catenin IEC-6 tet-offにおいて、DN89β-catenin誘導時、非誘導時間で変化はなかった。またDN30tcf4 DLD-1 tet-offにおいてもDN30tcf4誘導時、非誘導時間で変化はなかった。 (2)樹立した細胞株の細胞の形態の変化がDN89β-catenin IEC-6 tet-offにおいて、DN89β-catenin誘導時およびDN30tcf4 DLD-1 tet-off非誘導時に長期培養することで、細胞が積み重なり増殖を続けるのが観察された。一方DN89β-catenin IEC-6 tet-offにおいて、DN89β-catenin非誘導時およびDN30tcf4 DLD-1 tet-off誘導時にはparent細胞同様、上記変化は観察されなかった。 (3)soft agar内での培養によりDN89β-catenin IEC-6 tet-offにおいて、DN89β-catenin誘導時およびDN30tcf4 DLD-1 tet-off非誘導時に活発なコロニーの形成がみられた。一方DN89β-catenin IEC-6 tet-offにおいて、DN89β-catenin非誘導時およびDN30tcf4 DLD-1 tet-off誘導時にはparent細胞同様、上記変化は観察されなかった。 3.標的蛋白質の網羅的検索 樹立した細胞から導入遺伝子発現誘導前後の蛋白質を抽出し、精製、分画、濃度調整を行い、ProteinChipシステム【○!R】により解析した。DN89β-catenin IEC-6 tet-offにおいて、DN89β-catenin誘導時およびDN30tcf4 DLD-1 tet-off誘導時に発現が変化するpeakを認めた。現在それらのpeakを単離精製中である。
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