近年、肥満細胞で産生されるキマーゼが従来のエンドセリン(ET)とは異なる31アミノ酸の新規ET、ET(1-31)を産生することが報告された。従来のETは21個のアミノ酸からなり、これまでに強力な血管収縮作用をもつことや、動脈硬化に関与していることが既に明らかになっているが、ET(1-31)については不明である。今回、動脈硬化モデル動物を作成し、新規ET、ET(1-31)の動脈硬化の発症または進行における役割について検討した。動脈硬化モデル動物には、高脂肪食と一酸化窒素合成酵素阻害剤を長期投与したハムスターを用いた。このモデル動物は40週間処置を行うと、胸部大動脈に高度に進行した病変(強い炎症を伴う高度の内膜・中膜・外膜肥厚)がみとめられた。免疫組織染色でET1(1.31)の発現を検討した結果、動脈硬化病巣の内皮を中心に、中膜や外膜にも強く発現がみとめられた。動脈硬化の病変に伴う発現の上昇は、従来のET-1(1-21)と比し、ET-1(1-31)は顕著であった。さらに、動脈硬化病変部位でのET-1(1-31)の局在を詳しく検討した結果、血管壁全体へ浸潤した炎症系の血球細胞(組織球、単球、好中球など)で強い発現を認めた。今回は、最初にET(1-31)について報告されている肥満細胞やキマーゼの関与は認められなかったが、近年ではET(1-31)が炎症性の疾患に関与していることや、単球や好中球からも産生されることなどの報告がされている。本研究結果より、炎症性の病変である動脈硬化においても、ET-1(1-31)は病態や進行に関与することを証明された。
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