研究課題
前年度の結果、トリパノソーマの新規低分子膜蛋白質が蛍光抗体法により細胞膜に局在していることが予想される像が得られた。そこで、細胞膜をビオチン化し免疫沈降を用いてこの蛋白質が膜に局在していることを証明するための実験を行なった。一般的なリジンを用いたビオチン化ではこの蛋白質を免疫沈降することが出来なかった。これはC末端側にリジンが存在しないためビオチン化が起こっていないのが原因と予想される。また、C末端側にはシステインも存在しないため、カルボキシル基を利用したビオチン化を試みたが、架橋剤による凝集反応のため上手く行かなかった。現在、糖鎖を用いたビオチン化で膜蛋白であることを証明しようと試みている。また、この蛋白質に結合している蛋白質を免疫沈降で落とすことを試みた。C末端領域にFLAG、myc、HAなどの数種類のタグを付けたリコンビナント蛋白質をトリパノソーマおよびHEK293細胞に発現させたが、どれも細胞可溶化液がウエスタンブロットで反応を示さなかった。これはC末端に存在する2つのプロリンによりタグが蛋白質の内側に折り込まれマスクされてしまうことが原因であると推測される。これらに加え、昆虫型のトリパノソーマで行なっていた当教室で開発したテトラサイクリン誘導性のdsRNA発現ベクターを用いたRNAiを血流型のトリパノソーマで行なった。2種類のベクターのコンストラクトを遺伝子銃やエレクトロポレーションといった方法で導入したが、クローンを得る事が出来なかった。このことから昆虫型でも認められたようにプロモーターのリークにより少量でもRNAが抑制されるとトリパノソーマが生存出来ない事が予想される。このことよりこの低分子膜蛋白質は発現が少量ながらトリパノソーマの生存に重要な役割を果たしていると予想される。現在、siRNAを用いたRNAiを検討中である。
すべて 2005
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The Journal of Biological Chemistry Vol.280 No.14
ページ: 14085-14096