<分泌小胞上に発現させたABCタンパク質の機能解析> 出芽酵母はSec6遺伝子の変異Sec6-4によって、25℃では正常に生育するが、37℃では分泌小胞を細胞内に大量に蓄積することが知られている。出芽酵母の主なABCタンパク質遺伝子を破壊した株(AD1-8u)にこのSec6-4遺伝子変異を導入し、37℃において分泌小胞を蓄積するような株(Ap1-8u-sec6-4)を構築した。また、Sec6-4遺伝子変異の本体がL633Pのアミノ酸置換によるものであることを明らかにした。 <Candida glabrataのABCタンパク質Cdr1pおよびPdh1pのリン酸化による活性制御> 病原真菌Candida glabrataのABCタンパク質、Cdr1PとPdh1Pのリン酸化状態と薬剤排出機能の相関を調べた。抗リン酸化セリン・スレオニン抗体を用いたウエスタンブロット解析により、両者はそれぞれ異なるPKAの触媒サブユニットによってリン酸化されること、またそのリン酸化量がストレスや栄養条件によって変動することを明らかにした。さらに、Cdr1Pの予測されるリン酸化部位を変異させたタンパク質を用いて解析を行った。その結果、307番目のセリンと、484番目のセリンをアラニンに置換させると、リン酸化量とATP加水分解活性が低下し、薬剤耐性能も低下することを明らかにした。 <Cdr1pとCdr2pの基質特異性> 相同性の高いアミノ酸配列をもつCdr1pとCdr2pが異なる薬剤排出活性をもつことを利用し、それぞれのドメインを交換したキメラタンパク質を作製し解析を行うことで、基質特異性を決定する領域を調べた。その結果、分子内の二つのTMDを交換したものは薬剤感受性試験において基質特異性が大きく変化しており、特に、TMD1の交換が基質特異性の決定に大きく貢献することが示唆された。
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