研究概要 |
髄膜炎菌は数ある髄膜炎菌起炎菌の中で唯一流行性髄膜炎を起す危険な菌である。。本研究では通常の臨床医学では髄膜炎菌の確定マーカーとして一般的に認識されているγ-glutamyl aminopeptidase(GGT)の遺伝学的、生化学的解析を行なった。その結果、髄膜炎菌GGTは細胞内で発現後、プロセシングを受け、大小の二つのサブユニットから構成されることが明らかとなった。また、他菌種の同酵素とは異なり、細胞質側に局在していることを明らかにした。(Takahashi and Watanabe, FEMS Microbiol Lett, 2004).さらに髄液や髄液を模倣した人工培地ではGGT欠損髄膜炎菌の成育に障害が認められ、髄膜炎菌のGGTは髄液などの環境中での成育に関与する生理学的機能やその病原性に関与することが示唆された。(Takahashi et al., J.Bacteriol. 2004.)。一方でGGTの臨床医学上のGGTの分類マーカーとしての役割の再検討及び天然GGT変異体の解析を目的として現在までに単離されて髄膜炎菌株約250株のGGT活性を測定した。その結果、3株でGGT活性の欠失が認められ、その内の二株はGGT遺伝子内に点変異を保持していることを明らかにした(Takahashi et al, Microbiol Immunol, 2004)。 また、1974年から30年に渡って分離・保存された髄膜炎菌182株をmultilocus sequence typing(MLST)法を用いて分子疫学的に解析を行なった。その結果、41種の日本固有の遺伝子型(ST)を含む63種類ものSTが同定され、海外で大流行を起こしたST株とその派生型ではあるが日本固有とされるST株、そして海外では検出されていない日本固有のST株の3タイプが存在していることを見出した、海外流行株が日本に定着もしくはさらに派生する一方で、日本古来存在すると思われる日本固有株とその派生株が存在している可能性を見出した(Takahashi et al., J Med Microbiol, 2004.)。
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