研究課題
髄膜炎菌は数ある髄膜炎菌起炎菌の中で唯一流行性髄膜炎を起す危険な菌である。本研究では日本固有の患者由来株(病原性株)ST-2032株のグノムDNAのプラスミドライブラリーを作成後、接合によりST-2046株(非病原性株)へ導入してST-2046株をバックグランドとしたST-2032 DNAライブラリーを作成した。その後、ヒト脳内血管内皮細胞(HBMEC)に対して感染性(細胞侵入性)が上昇する変異体をgentamicin assayによるpositive screeningで選択し、培養細胞に対する感染効率が上昇したクローンを単離することによる髄膜炎菌の新規病原因子の同定を試みた。そのPositive screeningにより、リポ多糖(LOS)のphosphpethanolamine(PEA)修飾に関与するLptAが唯一の候補因子として単離された。解析の結果、1)lptA欠損髄膜炎菌株は野生株に比べ、ヒト脳血管内皮細胞(HBMEC)への接着能が約1/10に低下していた。2)Western blottingの結果からLptAは細胞内膜に存在していることが明らかとなり、髄膜炎菌はPEA付加LOSによりヒト培養細胞への接着を促進しているが推測された。3)そのlptA欠損髄膜炎菌株の接着能低下は他のヒト内皮細胞(HUVEC)や上皮細胞(A549)でも確認された。4)lptA欠損髄膜炎菌株においても既知の接着因子の発現量に変化は認められなかった。さらに既知の接着因子の欠損を導入した結果、lptA欠損髄膜炎菌株の接着能低下は既知の接着因子とは無関係に起こっている可能性が示唆された。以上の結果から、LptAによるLOSのPEA修飾を介して髄膜炎菌はヒト培養細胞に対する接着をより効率化していると推測された。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
Microbiology and Immunology 50
ページ: 707-711