まず、遺伝子アジュバントとして最適な分子を選択するため、Toll様受容体からのシグナル伝達に関わるアダプター分子、MyD88、TRIF、TIRAP、TRAM、TOLLIP、IRAK1、TRAF6に着目した。これら分子のcDNAをヒト脾臓由来ライブラリーからクローニングし、哺乳動物発現ベクターに導入した。これら発現プラスミドをHEK293細胞にトランスフェクションし、細胞内のNF-κB活性化、IFN-βプロモーター活性化を指標にして、それぞれの分子の機能を検討した。これら分子の中で、MyD88はNF-κBを最も強く活性化し(無処置の細胞と比べて>55倍)、TRIFはIFN-βプロモーターを最も強く活性化すること(無処置の細胞と比べて>390倍)が判明し、この2つの分子を遺伝子アジュバントとして応用し、検討することとした。DNAワクチン用に開発されたpGAベクターにLacZ遺伝子を導入したpGA-LacZプラスミドを作製した。このプラスミドに、MyD88遺伝子を発現するカセットもしくはTRIFを発現するカセットを挿入し、pDX-LacZ-MyD88もしくはpDX-LacZ-TRIFを作製した。これらをHEK293細胞にトランスフェクションし、細胞内のLacZ活性、NF-κB活性化、IFN-βプロモーター活性化を比較した。LacZ活性は、ほぼ同等レベルであり、NF-κBはpDX-LacZ-MyD88で最も活性化しており(pGA-LacZを導入した細胞に比べ>7.7倍)、IFN-βプロモーターはpDX-LacZ-TRIFで最も活性化されていた(pGA-LacZを導入した細胞に比べ>10.7倍)。以上の結果から、MyD88は導入された細胞内でNF-κBを活性化し、TRIFはIFN-βを産生誘導することで、ワクチンの免疫原性に影響するであろうことが想定された。
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