遺伝子アジュバントとして最適な分子を選択するため、Toll様受容体からのシグナル伝達に関わるアダプター分子の中で、MyD88はNF-κBを最も強く活性化し(無処置の細胞と比べて>55倍)、TRIFはIFN-βプロモーターを最も強く活性化すること(無処置の細胞と比べて>390倍)が判明し、この2つの分子を遺伝子アジュバントとして応用し、検討することとした。DNAワクチン用に開発されたpGAベクターにLacZ遺伝子を導入したpGA-LacZプラスミドを作製した。このプラスミドに、MyD88遺伝子を発現するカセットもしくはTRIFを発現するカセットを挿入し、pDX-LacZ-MyD88もしくはpDX-LacZ-TRIFを作製した。これらをBALB/cマウスに筋注エレクトロポレーション法で導入し、LacZに対する免疫応答を評価した。pDX-LacZ-MyD88ではpGA-LacZ投与群と比べ、7.8倍の抗原特異的抗体産生を誘導し、pDX-LacZ-TRIF投与群では、5.2倍の抗原特異的IFN-γ産生および有意に強力なCTL活性を誘導した。これらDNAワクチンの標的遺伝子をHAに交換し、pGA-HA、pDX-HA-TRIFを作製し、BALB/cマウスに投与後4LD_<50>のインフルエンザウイルス(H1N1)を経鼻感染させ、その後の生存率を評価した。感染後7日の生存率は、pGA-HA投与群では40%、pDX-HA-TRIF投与群では100%であった。このことにより、TRIFを遺伝子アジュバントとして用いることでDNAワクチンの免疫原性を増強し、ウイルス感染防御を増強したことが判明した。
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