ミクログリアは中枢神経系に常在するマクロファージ様細胞であり、脳内防御免疫システムにおいて中心的な役割を担う。平成16年度の本研究では、中枢神経系ウイルス感染に対するミクログリアのケモカイン応答機序を細胞レベルで解析した。代表的な中枢神経系ウイルスである狂犬病ウイルス(RV)はミクログリア細胞株Ra2に感染しウイルス蛋白質を発現するが、ウイルスゲノムの複製への過程が阻止されるために子孫ウイルスが産生されないことが分かった。RV感染によるRa2細胞のケモカイン遺伝子発現プロファイリングを行った結果、2種類のケモカイン(CXCL10及びCCL5)の発現が選択的に増大することが分かった。また、RVに感染したミクログリアでは、宿主転写因子Nuclear factor kappaB(NF-kB)、及びMitogen-activated protein kinase(MAPK)ファミリーに属するExtracellular signalregulated kinase(ERK)1/2とp38、c-Jun N-terminal kinase(JNK)のリン酸化が検出された。各シグナル分子に対する阻害剤の存在下でのRV誘導性ケモカイン応答を解析した結果、CXCL10及びCCL5の発現はNF-kBの活性化によって誘導されること、またp38はNF-kBシグナルを間接的に増強することでケモカイン発現を促進することが分かった。さらに、ERK1/2の活性化はRV感染に対する過剰なCCL5産生を負に制御することが示された。
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