研究概要 |
自然免疫系と獲得免疫系連携に中心的役割を担っている樹状細胞(DC)に注目し、その分化におけるInterferon(IFN)-α/βとIFN regulatory factor(IRF)の役割を、遺伝子欠損マウスを用いて解析した。IFN-α/βシグナルに対し抑制的に作用するIRF-2遺伝子欠損マウスにおいて、ミエロイド系DCと呼ばれるDCの亜集団の分化が抑制されており、マクロファージ系細胞集団の割合が異常増加している事実を見出した。こうした分化異常はIFN受容体欠損マウスとの二重欠損マウスにおいては見られなくなることから、IFN-α/βは骨髄内でのDC分化に「負」に制御する役割があると考えられた(PNAS vol.101,pp2416,2004)。次に,生体内で最も強力にIFN-α/βを産生する細胞として知られる形質細胞様樹状細胞(pDC)における大量のIFN産生メカニズムについて検討を進めた。PDCもDCの亜集団であるが、病原体由来の非メチル化DNAや一本鎖RNAなどをToll様受容体TLR9やTLR7を介して認識し、そのアダプター分子であるMyD88依存性にIFN-α/βを大量産生する事が報告されている。今回、IRF-3およびIRF-7転写因子とMyD88との関係につき検討を行った。まず、fluorescence resonance energy transfer解析や免疫沈降実験により、細胞質においてIRF-7がMyD88と会合することを見出した。一方IRF-3はMyD88と会合しないことが示された。また、レポータアッセイや共焦点顕微鏡での観察により、IRF-7がMyD88依存性に活性化され、核移行することも観察された。さらにIRF-7はMyD88依存性シグナル伝達経路において働くもう一つのアダプター分子であるTRAF6とも会合し、活性化されることも見出した(PNAS vol.101,pp15416,2004)。IRF-7遺伝子欠損マウスを作成して解析を進めたところ、やはりIRF-7遺伝子欠損マウス由来pDCにおいては非メチル化DNAや一本鎖RNA刺激によるIFN産生が全く認められなかった(Nature in press)。これらの結果、おそらくTLR7/9直下において刺激依存性にMyD88をはじめ、IRF-7、TRAF6を含む複合体が形成され、効率よくIRF-7を活性化しIFN産生誘導しているものと考えられた。
|