本研究は胎児肝のB-1細胞前駆細胞およびB-1細胞分化条件を決定することにより、B-1細胞の分化経路、調節機構を明らかにすることを目的としている。平成16年度においては以下の結果を得た。 1)胎児リンパ球前駆細胞からのB細胞分化条件の探索:B細胞分化の初期の段階におけるIL-5の役割を検討する目的で血球マーカー陰性(Lin-)前駆細胞からIL-7依存性にB細胞分化を誘導する培養系にIL-5を加え影響を検討したところ、IL-5はIL-7の役割を代替できないこと、IL-7にIL-5を共存させても分化するプロB細胞の形質には特に変化の見られないことがわかった。これらの細胞をSCIDマウスに移植し、終末分化を誘導したところ、IL-5を共存させた培養の移植を受けたマウスにのみ糞便IgAの分泌が認められ、Bリンパ球初期分化段階でのIL-5刺激が終末分化や局在に影響を与える可能性が示唆された。さらにこれらのマウスでは腹腔B-1b細胞の数がIL-5を含まない培養の移植を受けたマウスより多い傾向が認められた。 2)B-1前駆細胞の同定:IL-5およびIL-5R欠損マウスではB-1細胞が減少することからIL-5RはB-1前駆細胞マーカーの候補の一つであるが、胎児肝および成体骨髄中のLin-細胞集団にIL-5R陽性の細胞はフローサイトメトリー法およびRT-PCR法では認められなかった。ところがこれらの細胞をB細胞分化条件で4日間培養するとIL-5Rαの発現が誘導され、また胎児肝ProB細胞ではIL-5Rαの弱い発現がRT-PCR法で認められたことから、Lin-前駆細胞からProBまでの間にIL-5Rの発現が誘導されることがわかった。
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